『ジャクソン・ギャラクシーの猫を幸せにする飼い方』を読んで知る「猫は夜行性ではない」という事実。

2019年の年末、子猫を飼い始めた。とはいえ猫を飼うのは初めてで、知らないことだらけ。可愛いよりも、わからないが先に立つ。猫飼いの友人に聞いて回り、動画をアレコレ見たり、本を読んだりと、ひと通り準備したつもりだったが、それでも「この子」の解は自分で見つけるしかない。育児書片手に新米ママが狼狽えるのはこういう時かと合点がいった。ヒト科ヒトとネコ科ネコとは、もちろん大いに違うのだけれども。

わが家に迎えて早くも猫の本領が発揮されたのは、電気コードだった。とにかく、かじるかじる。かじらせないようにとまとめていたら、おもちゃを取り上げられた腹いせか、毛を逆立てて近づいたり遠のいたりを繰り返す。何をやってるのかわからず、え?となったが片づけ終えて調べてみると、なんと威嚇のポーズ! 怒ってたことを後から知るだめな飼い主が露呈した瞬間だった。

別の日には、ケージのカバーにしていた布団カバーを洗濯しようと思いつく。外した途端に、またあの不可思議な威嚇ダンスに猛ダッシュが加わった。え?どこにお怒りのポイントが?と疑問符がついたままのだめ飼い主は、落ち着かせようと子猫をケージに隔離。ところが、落ち着くどころか火のついたように鳴き出した。鳴き止むまで、と思って放置すると、少しばかり声のトーンが変わった。時間が空いたので出してやると、彼女は一目散に、トイレに飛び込んだ。怒った拍子にもよおしたらしい。以来、それまでは毎度あった「うんち出た〜」の報告が途絶えた。

一事が万事そんな調子で、日々、子猫にキレられ、少しばかり後悔の気持ちが頭をもたげながら、対策を考える日々が続いた。

ジャクソン・ギャラクシーを知ったのはYouTubeだった。アニマルプラネットで放送されていた「猫ヘルパー」(原題:My cat from Hell)の一部に日本語字幕のついた動画が限定公開されている。シーズン9まである番組では、「猫の行動専門家」を名乗る彼が、猫と飼い主の元を訪れ、その家の問題を解決していく。ジャクソンが赴く家庭で抱えている課題は、それぞれに違いがあり、何より猫との向き合い方には学ぶ点が多々あった。

ふと思い立って、アマゾンで彼の名前をググってヒットしたのが本書だ。全21章、4部構成で次のような目次になっている。

PART1 愛猫たちのルーツと歴史
 第1章 ワイルド・キャットとは?
 第2章 室内飼いへの大変化
PART2 なるほどなっとく猫知識
 第3章 ワイルド・キャットのリズム
 第4章 猫の暗号を解読する
 第5章 猫のタイプと自信が持てる場所
PART3 ジャクソン流・猫を幸せにする飼い方
 第6章 道具箱へようこそ
 第7章 ワイルド・キャットのための基本ツールを覚えよう
 第8章 猫のための部屋づくりと縄張り
 第9章 猫を育てる技術
 第10章 猫とほかの動物との関係
 第11章 猫と人間との関係-絆を築く-
 第12章 誰のための挑戦ラインか?
PART4 あなたの悩みに答えます
 第13章 爪研ぎの問題を解決せよ
 第14章 猫たちの折り合いが悪い場合
 第15章 人を噛んだり引っ掻いたりする場合
 第16章 注意を引こうと問題行動をとる場合
 第17章 不安による問題を防ぐには
 第18章 野良猫がトラブルを引き起こす!
 第19章 愛猫が内弁慶すぎる
 第20章 トイレの大問題に立ち向かおう
 第21章 モジョってこういうこと

猫のそもそも論に始まり、地ならしとしての基礎知識、そしてケースバイケースのQAまで、保護施設での勤務や猫ヘルパーとしての経験に裏打ちされた丁寧な説明は、恐ろしく説得力がある。番組を見た人はきっとジャクソンが番組内で説明したいくつもの点が次々につながっていくに違いない。

犬よりもずっと後にヒトと暮らす道を選んだ猫は、一般には知られていないことが多いという。道理で、毎日のように(あ、猫ってこんな動物だったんだ)と発見がある。例えば、猫は手間がかからないとか孤独を愛すとか、どちらも正確ではない。食事にトイレにお手入れと基本的な手間はかかるし、孤独どころかうちの猫は軽いストーカーだ。食事も猫まんまでいいのかと思っていたら、穀物系は消化できない体だっていうし、しつけできないと思っていたら結構返事もする…何しろ想定外だらけなのだ。

中でもジャクソンの説に強く共感したのは「猫は夜行性ではない」ということだった。ジャクソンは「猫の活動が最も活発になるのは夕方と明け方だ」という。実際、うちの子猫も夜は寝ている。朝方になるとヒトより先に起きて、起こしに来る。ちなみに、その起こし方は甘噛みという、決して褒められたやり方ではないのだけれど。

そうして、ジャクソンは猫の本能に基づいた基本的なサイクルを「HCKEGS」とまとめている。すなわち「狩りをして、獲物を捕らえ、殺して、食べ、そして毛づくろいをして、眠る」(Hunt, Catch, Kill, Eat, Groom, Sleep)という流れ。これがスムーズにできると、室内飼いでたまるエネルギーをしっかり発散できるため、猫の満足度が高まるという。猫という野生性の強い動物と共生する時に、根本的に押さえておかなければならない事項を丁寧に説くのだ。もちろん、家のサイズ感などは、アメリカと大きく異なる点かもしれない。ただ、日本で出版されている猫の飼い方本が「飼い方」と銘打ち、どちらかというと細かなスキルに寄っているのとは大きく一線を画し、猫の何たるか、を丁寧に伝えようとしている。そしてその姿勢こそ、私のように「何はさておき猫が好き」みたいなスタンスから飼い始めたのではない者にとっては、必要なものだった。

こうして根本的に猫という動物の習性から説くジャクソンの本を読んだ後、わが家で即座に取り入れたのは「猫テレビ」だ。ヒトがテレビを見るように、猫に窓の外を見せる、というもの。猫にとって窓は、眺めているだけで、狩りのシミュレーションにもなり、ほどよい刺激になるのだそう。ちょうど小さな路地の交差点にあたるわが家では、車の行き来は激しいし、音も相当なのだけれど、なぜか鳥が頻繁にやってくる。それもあってか、外を眺めるのは彼女のお気に入りになった。

子猫がわが家にやってきて、そろそろ半年になる。この間は、コロナの影響で家で過ごさざるを得ない時間とも重なっていた。猫は1歳で成猫になるというから、子猫の時期も残すところ4か月ほど。きっと、あっという間に違いない。そうやって「この子猫」に向き合いながら、猫との暮らしを模索し続ける。きっと、ジャクソンの本を何度も読み返すことになるだろう。

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