『計画と無計画のあいだ』を読む

book_mishima友達が台湾にやってきた。来台前に「お土産何がいい?」と聞かれ、本、と答えた。結局、お願いした本は手に入らなかったのだけれど、それとは別に彼女が携えて来た1冊もまた、ずっと読みたいと思っていたものだった。『計画と無計画のあいだ』(三島邦弘著、河出書房新社)。サブタイトルには「自由が丘のほがらかな出版社」の話、とある。本書には、著者のたどってきた軌跡が丁寧に語られる。と資金が一気に厳しくなりながらも場づくりは大事だ、とオフィスを借りたこと。一人めのスタッフを雇おうと思った時の金欠っぷり、金欠を打開するために「泥を飲んでも」と他社の編集を引き受けたこと。エクセルが使えないから数字を入力した後で計算機を使っていること……読みながら冷や汗かきそうな事態が、なんともほがらかに描かれている。

 

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思い立って会社を辞め、海外に旅に出て、出版社を起業した。もう、冒頭のこのくだりから心が持っていかれて、一気読みしてしまった。まさに台湾留学を決めた時の自分の心境を表したような一文にあたった。

——28 歳になる直前の 2003年 5 月末、ボーナスが出るひと月前にあたるこの時期に、会社を辞めた。そして旅に出た。あとひと月と数週間いれば、懐も少しは暖かくなっていた。もちろん、喉から手が出るほど必要なものであった。なにせ家族で稼ぎ手はぼくしかいなかったのだ。
 だが、そんなこともみな、百も承知の上での行動だった。きっと、ほんの少しでも計画的な人間であればそうはしなかったろうと思う。
 けれどぼくは一切後悔していない。むしろ真逆だ。
 あのとき、自分に嘘をついていたら、と思うとぞっとする。ずっと自分のなかで湧きあがる感情に対して感覚を鈍らせたまま生きる人間になっていたかもしれない。
 いま、この瞬間、どうしても動かなければいけない。そういうときが人生のうちに必ずある。
 その瞬間、理屈や理性、計画的判断といったものを超えて動くことができるかどうか。
(太字部分、原文傍点)

なんだか自分のそれとピタリと重なった。年齢は一回り違うけど、留学を思い立ったとき、わたしもわが家の大黒柱だった。迷ったけれど、あのとき、自分に嘘をついていたらと、思うと、やっぱりぞっとするのだ。

 

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こうしてサイトを始めたのは、台湾という場所に居ながら、本の未来を自分なりに探したい、それも、紙だけではなくネットや電子書籍とも付き合いながら、誰かがこれまで知らなかった台湾の姿を届けられないものか、と思ったから。

サイトを始めて 1 か月ほどになる。決めていることといえば「毎日書く」「文章には自分が撮影した写真を添える」ということだけで、計画性はない。留学から国際結婚、仕事、はては台湾情報まで実際、話題がアチコチしている。だからかもしれないけれど、「もう書けない」とはちっとも思わない。何しろ、台湾暮らしは毎日が取材みたいなもんで、ぶつかる出来事は一つ一つがどれも新鮮だ。

もともと人生なんて初めての連続ではないか、という著者の名言に乗っかっていうなら、台湾暮らしを記すことに正解も間違いもないはずだ。ただ、こんな世界が見えるよ、というのを書いているに過ぎないのだから。でもそれは、日本に居てはきっと見えない世界。そして、見えてきた世界を、自分の言葉で表現するとどうなるんだろう、という疑問を自分で解いている。人生なんて、誰かが答えをくれるものではないし、やっぱり自分で解かなきゃな、と思う。これからもまた、いろんな世界が見えるのだろうけれど、やっぱり未来は自分でつくらなきゃ。次は同じ著者の書いた『失われた感覚を求めて』(三島邦弘著、朝日新聞出版)を読もう!

計画と無計画のあいだ—「自由が丘のほがらかな出版社」の話

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