『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』を読む。

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このところ台湾の雑貨ブランドを取材していて、ちょうどデザインっていってもいろんなアプローチがあるよなあ、などと考えていた時に Twitter で『問題解決に効く「行為のデザイン」思考法』の感想が次々と流れてきた。最近、こうして実際に本を手にする機会が増えている。おまけに、「行為のデザイン」と聞いて、すぐに思い浮かんだのは、自分の仕事で課題だと感じているバグだった。(なんというタイミング!)と思いながら、Kindle 版を購入した。

 

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本書は、プロダクトデザイナーである村田智明さんが、プロダクトでもグラフィックでもエディトリアルでもない「行為のデザイン」という概念を丁寧に説明することから始まる。

私が提唱している「行為のデザイン」とは、人の行動に着目し、改善点を見つけてより良く、美しくしていこうとする手法です。ユーザーが滑らかに目的の行為を進められるデザインを「良いデザイン」と定義し、最終目標とします。(本文より引用)

せっかく作った商品。でも、その使用の前提にはユーザーが自分の体に合わせて設定を変更しなければならない。従来の手法なら、取説を詳しくする、という方法を選択するところを、「ユーザーの行動や心理を基準にしてプロダクトの形を変える」ことにしたのが、このノウハウの生まれたきっかけなのだとか。

これまでなら説明書を改善するほうを選んでいたかもしれません。しかしそのとき私はプロダクトの形状を大きく変えてみることにしました。「企業がつけたい機能」をつける形ではなく「ユーザーの行為」から形を作れば、説明書がなくても正しい使い方を導ける可能性を感じたからです。
説明書は一見親切ですが、本質を見れば不親切です。なぜならユーザーは操作のためにまず言葉というメディアを体験しなければならず、ユーザーが本来求めている行為以外で時間を費やさなければいけないからです。
(本文より引用)

1 章では、行為のデザインの概念を丁寧に説明した上で、2 章で人の行為を立ち止まらせるものを「バグ」とし、その種類と解決法を具体例に基づいて紹介する。続く 3 章では行為をデザイン化していく手順に加え、4 章で行為を誘発するアフォーダンスデザインをプロダクト事例とともに紹介、さらに 5 章では行為のデザインのプロセスとして、ワークショップとその手順を述べている。

5 章にあったワークショップの手順は、たとえば編集者なら企画立案のプロセスに生かせるし、ライターなら原稿をまとめていく過程に参考にできる部分が多々ある。ミニマムデザインなんてまさに。実際、本書を読みながら、抱えている仕事の行動フローを振り返り、感じていたバグを整理して仕事相手にフロー変更を提案することにした。

仕事には「行為のデザイン」が生かしやすい。でも、それだけではない。日常のなにげないひとコマも行為をスムーズにするにはどうしたらいいか、を考え抜く様子が伝わる。

著者が例にしていたのは、外から帰宅した際にジャケットとズボンをどういう順番で片付けるか。多くの人はジャケットを脱いでからズボンを掛けるだろうけれど、ハンガーのデザインはジャケットが前提になっていて、ズボンを掛けるときに行為が止まってしまう、と指摘する。行為が止まるのは、マジョリティの行為が反映されていないデザインだからだ、と。

自分の日常を振り返ってみた。

毎日、コーヒーを淹れる。ポットはリビングに、コーヒー豆はキッチンに置いてある。リビングとキッチンはひと続きなのだけれど、ポットはキッチンとは逆の位置にあるから、コーヒーを入れるたびにリビングを往復しなければならない。豆を蒸らす時間になっていいか、と思っていたのだけれど、思い切ってポットの位置を変更したら、コーヒーを淹れる行為がとてもスムーズになった。

読みながら改めて気づいたのは、海外や新しい土地での暮らしでたくさんのバグが生まれる理由だ。(あれっ?)と思うことが多いのは、自分の行動基準が新天地ではマイノリティになるからだ。だから余計にバグは多くなる。そのバグを放っておくか、それとも一つ一つ解決していくか。気持ちよく暮らしていくには、ささやかなバグも丁寧に扱いたいもんだなあと思う。

文字にかかわる仕事は、読む行為を止まらせないようにすること。

そんなふうに言葉にするのは簡単なのだけれど、実現はなかなか難しい。日々是精進。

ところで本書の内容と直接的には関係ない点を 2 つ。
・無知をさらけ出すけれど、iPad miniのKindle アプリで本書を読んでいたら、本文に出てくる「漏斗」の読みでつまづいてしまった(「ろうと」もしくは「じょうご」と読む)。電子版ではカッコ書きのルビ付きを希望。
・通常、Kindle 本では目次の小見出しまでリンクが貼られているのだけれど、5 章のワークショップ手順にはリンクがない。システム的な問題なのかしら。

 

問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法

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