『国際結婚の諸相』に見る台湾媳婦いろいろ。

国際結婚の諸相

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前回の記事でご紹介した《灣生回家》を観て、国際結婚も移民かー、などと思い、国際結婚についての本を検索していたら、なんと台湾に来たヨメについての調査が紹介されているという。タイトルは『国際結婚の諸相』という思いっきりの専門書だけれど、どんな人がどんなことを話しているのだろうかと俄然、興味が湧いて、手に取ってみた。

日本で出版されている本の中には、タイトルにばっちり「台湾」と入っているから、探しやすいものと、台湾のことを扱っているのにタイトルに入っていなくて探しにくいものとある。本書は後者の例。本書は、家族社会学という学問領域で行われた調査結果をまとめられており、前半は「台湾における国際結婚」、後半は「日本における国際結婚」に分かれる。ここでは前半について取り上げる。前半は、次のような構成だ。

 第 1 章 日台関係の変遷と日台結婚の変容
 第 2 章 世代別にみる日台結婚の実態
 第 3 章 異文化適応と結婚満足度
 第 4 章 日本人妻の社会的ネットワークと結婚満足度
 第 5 章 台湾のテレビドラマ「家有日本妻」にみる日台結婚
 
序章で著者は次のように述べている。

 I「台湾における国際結婚」で台湾に居住する夫台湾人・妻日本人のカップルを取り上げた理由は、第 1 に社会変容にともない伝統的大家族が減少し、核家族化が進行している台湾は家族変動の時期にあり、家族社会学の研究対象として興味深いこと。第 2 に、台湾に居住する日本人妻が、日本の統治時代から半世紀以上を経て、近年再び増加傾向を示していることである。(略)第 3 に、現在、台湾には幅広い年齢層の日本人妻が居住しており、日本の統治時代に台湾に嫁いだ世代から、戦後生まれの両親に育てられ、台湾の民主体制が確立してから台湾に嫁いだ世代まで、世代別の考察が可能であること。第 4 に、台湾の民主化、経済成長ならびに国際化に伴い、台湾と日本の交流が盛んに行われるようになったことである。(本書より)

15 年以上前の調査ではあるものの、特に統治時代の終わりくらいから、歴史とともに妻目線で台湾を語るくだりは、とても興味深いものだった。どのように終戦を迎え、白色テロの時代に夫がどのような扱いを受け、戒厳令下をどう過ごし、1972 年の中国と日本の国交正常化をどう見、80 年代の日本文化の流入をどう捉え、李登輝→陳水扁の政権交代をどう感じていたか。これが、実際に当地で過ごしていた人の声として紹介されている。

特に印象に残ったのは、戦後間もなく日本語の使用が禁止された頃の日本人妻のエピソードだ。

「戦後しばらくは、日本と手紙のやり取りすらできませんでしたから、日本の何の接触もありませんでした。5〜6年たった頃にようやく、日本の母から手紙を受け取ったときには嬉しかったですよ。でも、検閲されてましたから、政治のことやなんかはもちろん書けませんからね、お元気ですか、とかそんな話だけですけど」(本書より)

国籍を越えた結婚をした場合、国際情勢に家族も翻弄されるということを実に端的に表している。

本書を読んでさらに知りたくなったのは、夫側の声だ。本書で紹介されていたのはアンケートの集計結果で、コメントやインタビューデータがなかった。調査の限界もあるのだろうけれど、採録されているのは片側からの声だったので、「そういう妻」を抱えた夫がどう感じていたのかにとても興味を持った。なぜなら、妻側の声だけでは、家族の実態が見えているとは言い難いからだ。

時折、わが家に台湾人夫と日本人妻が集まることがある。そこで繰り広げられるのは、互いの文化をどう理解するか、という話題だ。幸いなことに台湾人夫に嫁いだ大先輩が周囲に複数おり、どういう形で折り合いをつけるかを話し合うと、皆で大いに盛り上がる。夫の実家とどう付き合うか、相手の文化をどう理解するか、相手の話からだけではわからないことも、周囲の解説があると(ああ、そういう視点があるんだ)と角張っていた気持ちもちょっとだけまろやかにできる。

本書を読みながら、今はそういうことが自由に語れる時代なんだ、ということを改めて感じた。いろんな家族の形があって、いろんな夫婦の関係がある。本書が発売されて 15 年以上が経過している。移民という視点で考えると、夫婦間だけではなく、子育てや海外での老いの迎え方など、ほかの人がどう考えているのか、知りたいものだ。

 

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