日本人上司と台湾人年上部下

pijiu
中国語に好客という言葉がある。端的に訳せないのだけれど、文字通り、来客が好きで、人をもてなすのが好き、という意味で、中華圏では好感度が高い指標の一つなのだとか。わが家の大哥は義父に似てそれに当てはまるらしく、実に頻繁に来客がある。週 1 はたいてい誰かが飲みにくる。

昨日の晩も、何かと理由をつけて大哥の友達がやってきた。彼は台湾に進出している日系の大手企業に勤めるサラリーマンだ。わたしは原稿書きで席を外していたのだけれど、久しぶりに会った彼らはリビングで大いに盛り上がっていた。一段落して戻ると、大哥がわたしに言った。

「コイツがさ、いま日本人上司とうまくいってないんだって。ちょっと話を聞いてやってよ」

聞けば、彼のいる部署には日本人の上司がいて、意地の悪いことをするのだと言う。台湾での事例をよく理解しようとせずに指示を出すものだから、ベテランの彼が意見する。だけど、話を聞かない。会議中なのに「出ていけ!」と言われた、と憤る。彼も彼で、指示を受けた仕事をやらないなど、時折仕返しするのだとか。日本人上司への対策を、あーでもない、こーでもない、と議論していたらしい。

「同僚はどうなの? 上司に意見したりするの?」
「いや、みんな上司の側なんだよね」
「その上司とあなたの年齢差は?」
「向こうが一つ下」

台湾人で年上でベテランの部下を持った、大手企業の駐在日本人上司かあ……両者の構図が少しだけ見えた気がした。40 代後半で年上の部下を持ち、その部下が自分に意見してきたら、どうだろうか。台湾人部下への屈折した思いが態度に出ているのではないか。それをかの友達もわかっているから、なおのこと意固地になるのではないか。

大哥は「お前の態度にも問題があるんじゃない? 台湾での事例が間違ってる、ってことだってあるわけだし」と言いつつ、わたしに向かって言った。「話聞いてるとさ、その日本人は台湾人を見下してるってこともある気がするんだけど、どう思う?」ビックリしたけど、残念な気持ちのまま「かもしれないね」と答えた。

異文化で日本式の通じなさを体験している上司の苦悩も想像に難くないが、仕事上の両者の向かう先は、仕事をきちんと進める、という意味で共通にならなきゃならん話だろう。上司がそんな態度で誰も反発しないところに、彼一人が立ち向かっている気がして彼に「加油(がんばれ)」と言った。

2010 年のジェトロの資料では、資本率 10%を越える日系企業は台湾に265あるという。同じ資料で中国は 1,359 だというから、人口あたりの日系企業率は台湾が圧倒的に高い。資料によれば、1986〜90 年代に台湾への進出した企業の数が突出している。1987 年の戒厳令解除後だ。

資料に、ふと目を引いた項目があった。「雇用・労働面での問題点」。有効回答した 127 企業の回答は次のようなものだった。

1 位 従業員の質 37.0%
2 位 従業員の賃金上昇 35.4%
3 位 人材(中間管理職)の採用難 23.6%

この「従業員の質」という言葉に、現地に対する意識が透けて見える。自分はちゃんとしてるのか。それは現地だけの問題なのか。さらに読んでいくと、こんな項目もあった。

経営の現地化を進めるに当たっての問題点
現地人材の能力・意識の低さ
現地人材の語学力(日本語および英語)水準の低さ 他

なんだ、この上目線……じゃ、あんたたちは現地のこと、現地で話されている言葉を流暢に操れるまで勉強してるのかよ!と言いたくなった。相手だけに求めるなんて、おかしいでしょ。日本のやり方だけが正しいわけではない。現地には現地のルールや積み重ねがある。それをしっかりコミュニケーションしながら、すりあわせていくのが大事なんじゃないのか。

彼には、お互いを尊重する気持ちがないとうまくはいかないよね、と伝えた。お互いに歩み寄れますように、と思いながら、彼を送り出した。

参考資料)
「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査―中国・香港・台湾・韓国編―」(2010 年度調査)

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