台湾の版画と活字に教わる出版の源流。

先日、取材同行でお世話になった台北にある三二四版画工房のオーナー、楊さんから取材時に見せていただいた動画がリリースされたからシェアしますね、とURLが届いた。動画はおよそ10分。日本語の字幕が付いている。訳したのは楊さんのお友達で、台湾の方なんだとか。漢字と出版にかかわる一人として、心が揺さぶられる映像だった。

 
 

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日本の映像会社 Chance Maker の方々が制作した映像は、楊さんのインタビューがメインで紹介されている。取材同行で直接、版画に対する情熱を伺っただけではなく、「日本の浮世絵だって、版画の一つですよ」と聞いてはじめて自国の文化を理解した。そういえば、雑誌や書籍の表紙をお願いしていたイラストレーターさんも版画だったことを思い出した。

映像にも登場した活字の張さんのお店・日星鑄字行は楊さんの工房兼店舗の向かいにある。張さんのお店では活字を買うことができる。台湾で活字を扱うのは、この張さんのところだけになってしまったそう。活字制作の技術を継承する人は今のところいない。取材の際、張さんに 12 の文字を見せられた。「どれが活字の文字かわかりますか」と訊かれた。わからなかった。「これですよ」と教えてもらった文字は、点の打ち方から止めの角度が確かに違って、とても美しかった。

日本で出版に長くかかわってきたけれど、活字に触れたのは初めてのこと。まさか台湾でこんなふうに印刷の歴史を辿ることになるとは思いもよらないことだった。だが、張さんは日本とも交流があり、見学に訪れる人があるのだという。張さんのお店には、日本から注文が舞い込むこともあるそう。漢字は台湾にも日本にも共通する文化なのだと改めて気づかされた。

今、印刷は活版から DTP へと取って代わり、カメラのプリントもデジタルになり、イラストも手描きではなく PC で作られたものへと移行している。そんな中、楊さんと張さんがそれぞれの取材中に口をしたのは「次の世代へ残したい」ということだった。

張さんのお店のサイトには市内の学校から子どもたちが見学に訪れる日程などが記されている。楊さんのお店では、5 年かかって探し出したという年季の入った版画の機械が展示されていて、ワークショップが開かれる。張さんのお店で活字に触れ、楊さんのお店で飾り罫線や版画のオモシロさを教わる。一本の細い路地に広がる活字と版画の世界。それは出版の源流といっていい。その源流に触れ、わたしたちは何を残していこうとしているのか問われた気がした。台湾の 1 本の路地から発せられた問いは漢字文化をもつ一人一人にもつながっている

 


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