台湾と日本の感覚は初級語彙にだって差がある話。

gaoxiong

初めて台湾に旅行で来る際、台湾で四年制大学を卒業した自他ともに認める「台湾プロ」の同僚が、わたしに言った。「台北だけならコンパクトで、観光しやすいと思うよ」。実際に来台して地図を片手に回ってみて、なるほど、こういうことか、と思った。それぞれの観光スポットがとても近い。地図上で見ると、結構遠い気がしていたけれど、東京の移動距離を考えたら、えっ?もう着いたの?くらいの勢いである。

そう、この距離感。台湾で暮らしていると、なんだか不思議な気持ちになることがある。

 

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例えば。

日本にいた頃、東京の多摩地域にある自宅から都内の会社までぴったり 1 時間が通勤時間だった。駅まで歩き、電車に乗り、そして乗り換えて会社。この 1 時間は、仕事のオンオフを切り替えるのにとてもよい距離だった。

同僚は県境を越えてあちこちから通ってきており、中には 2 時間を越える距離を通っている人もいて、それはさすがに「遠いねえ」と思っていた。ところが今、自宅から午後お世話になっている翻訳会社まで、30 分強の距離を通っている。そのことを台湾人に話すと、たいていこんな反応になる。

「えっ! 会社ってそんなに遠いの?」

……東京なら「近いね」って言われる距離なんですけど。

もう一つ。

台湾には高鐵と呼ばれる新幹線が南北に走っている。有り難いことに日本語のサイトもあり、旅行客はオンラインで予約ができる。台北から高雄の左栄まではおよそ 1 時間半。なんなら通勤だってできなくはない。台湾人の会話を聞いているとよく耳にすることがある。

「いやあ、高雄ってホント遠いよね」

……1時間半って、東京駅から高尾までなんですけど。

さらにもう一つ。

台湾人の中には日本にかなり詳しい人もいて、「あ、四国出身なんだ。行ったことあるよ」と言われて驚くことがある。日本人だって「九州は行ったことあるんだけどね」って人は多いのに。あるとき、同僚たちと九州の話になった。一人の同僚が言った。

「田中さんは四国の出身だよね。じゃ、九州って近いじゃん。隣でしょ?

さすがにこれは、ほかの同僚たちの爆笑を誘い「何キロあると思ってんの!」と一斉にツッコミが入ったけれど。

さて、「遠い」「近い」という語は、日本語教育でも中国語教育でも初級語彙だが、その距離に対する感覚、捉え方は、人によって大きく違う。そういえば、ロシアのクラスメイトが言っていた。「車で片道 3 日かけてキャンプ場に行くんです」と。キャンプの距離感! 日本なら行って帰ってこれるなあと大いに驚いた。普通なんだそうな。

語感とは、その言葉から受ける印象や感覚のことだ。同じ一言でも人によって反応が違うのは、たとえ言語間では対語と位置づけられてはいても、その語に対する語感はそれまでの習慣、体験などから生じるずれなのだろう。日常生活の基本単語でさえこうなのだから、思考の流れや文化的な習慣などといった大事になると、また大きなずれがあるんだろうなあ。オモシロいもんである。

ちなみに写真は、台北から「遠い」高雄の観光スポット、駅構内のステンドグラス。台湾ドラマ『Black & White』(原題:痞子英雄)にも出てきましたな。このドラマもオモシロかった。おすすめの 1 本です。


 

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