上課 1 か月前後の振り返り。

school台湾の中国語教育で、よく使われるテキストがある。全 5 巻の『實用視聽華語』がそれ。1課はおおよそ、会話文例 2、文章 1、単語+例文、文法解説、練習問題で構成される。台湾師範大学の教師陣が作成したのだという。学生用にはMP3がついていたが、授業で会話文例のミニドラマも見た。かなり大がかりなシリーズだ。

プレースメントテストの結果によってわたしが配置されたクラスは、教科書 2 冊目全 13 課の 9 課から始まるクラスだった。上の URL によれば 2 冊目は「留学 4〜5か月」程度、3 冊目は「留学 10 か月」とあるから、いきなり 8〜9 か月くらいのクラスに入ったといっていい。

正直に告白しよう。最初の 1か月弱、かなりしんどかった。

あとでわかったことだけれど、最初の授業は中国語文法における初級最大のハイライト「補語」から始まっている。日本語教育でいうとテ形の活用あたりか。つまり、しょっぱなに山場。どんなドラマでも伏線があるものだけれど、結末から見せられてついていけるのって、すげー頭イイ人だ。わたしは昔から要領が悪く、何やるにも時間がかかる。初日、2 日目と、課末の練習問題さえ答えられず、呆然としていた。

わたしが通っていた台湾大学語文中心では、最初の 1 週間は条件が整えばクラス変更も可能なのだが、レベルを落としたいという願いは叶わなかった。退路は断たれたわけだから、あとは自分でどうにかする以外にない。毎日、授業後も図書館に直行して宿題をやり、CD はかけっぱなし、辞書や参考書を引きまくり……という日々が続いた。少しでも時間ができたら前の課の練習をやりたいのだけれど、宿題をやるので精いっぱいで、なかなか手が回らない。この理解の悪さは、わたしの年齢もあるだろうし、アタマの悪さもあるんだろうなあ。

授業は直接法で、説明に VO だの SV だの RE だのといった文法用語が頻出し、教科書には英訳はあるけれど日本語の解説はない。「先生、この SV ってなんですか」と聞いたら「あ、教科書のここに英訳があるから、それ見て」という答えだった。その答えに(え? それじゃ説明になっとらんだろ! ってか、わたしが聞いてるのはそーゆーことじゃねーし)と言いたいことは山ほどあったけど、飲みこむ以外になかった。

単語はまだいい。先生の説明直後の代入練習はなんとかなる。だけど、そのくらいじゃちっとも落ちてない、ということがわかるのは、宿題で出される作文を書くときだ。何しろ、わたしにはそれまでの基礎文法がない。家の建築でいえば、基礎工事がないまま床を張った感じで、ことごとく間違える。

追い込まれた感がピークに達したのは、2 週目の授業が終わった頃だった。先生は、口頭練習の際、絶対にわたしを最初には指名しない。指名が毎回最後だってのも、なんていうか、毎度(あなたはできないから最後ね)と言われているようだった。最大のプレッシャーは、成績 80 点以下は翌月奨学金支給なし、という条項があることだった。

自分の中のネガティブが暴走し始めたころ、周囲に愚痴をこぼしてみた。

房東小姐には「妳不要自己壓力(自分にプレッシャーかけるのやめなさいよ)」といわれ、テーブルで宿題していた弟弟(小 6)に「いっぱい間違えるんだよねー」と言ったら、「間違えたら復習すればいい。先生が赤字を入れてくれるでしょ? そこを復習して覚えればいいんだよ」と、これまた素晴らしいアドバイスが返ってきた。余談だけど、彼の答えを聞いて(あ、この家庭に来てよかったなあ)と心底思った。

友達からは「いま経験している悩みは、留学生なら誰でも経験してるし、それを乗り越えてこそ自分の自信になるもんだと思う。(略)わからないことを勉強しに行ったんだから、わからないのはあたりまえなんだからだいじょうぶ! 非常に順調だよ」とメールが届いた。

そんな数々のあったかいアドバイスにホロリとしていたところ、秀逸だったのは日本にいる妹のひと言だった。わたしの話をひとしきり聞いた後、こう言った。
「あのさ、あなた、授業が始まって何日なの?」
「2 週間」
「まだ始まったばっかじゃん。2 週間でわかるんなら、留学する必要ないわ

…ぐうの音も出ないって、このことだ。いや、もはや「ぐう」って答えたらよかったんじゃないかってくらい、素晴らしいツッコミだった。

このわからなさって、なんだか空に手を伸ばすのに似ている。乗り越えた感なんて、もちろんない。どうやって向き合うか。試行錯誤を重ねていた。その後、同學や老師に断って授業を録音させてもらったり、時折宿題を房東小姐に見てもらい、友達に質問したりしながら、テトリスの空いた穴を積み上げていった。この来週から教科書は 3 冊目に入った。脳のシワ増やす薬なんてのがあったらすぐ飲みたい気分。ま、そんな感じでした。

Post Navigation