翻訳文を読みにくくしている原因は表記にもある。

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中国語の文章を読んでいると、実によく登場する語がある。最近、気になったのは事柄を列挙する際に用いるだ。それぞれ又は/或いは及びとそのまま日本語にできる。忠実な翻訳文であればあるほど、この二語はしっかりと訳出しされる。その結果、「〜及び〜、〜又は〜。〜及び〜、〜又は〜。〜及び〜、〜又は〜」となる。これに、読点や「・」が加わると、、、、どうにも読みづらくて仕方がない。

特に又はという表記にはどうしようもなく違和感がある。あまりに気になったので、調べてみた。

 

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サイト「常用漢字」には、「報道と改定常用漢字表」と題してこんなことがまとめられている。以下、抜粋。

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ことごとく又を使用しないことになっている! どうりで見かけないわけだ。

手元にある『記者ハンドブック第12版ー新聞用字用語集』(共同通信社)を見ると、又、或、及、すべてひらがな書きする文字とされている。補足しておくが、この本は記者ハンと呼ばれて編集者の間では表記のよりどころだ。

もう一つ、翻訳者の手引きとなる『JTF日本語標準スタイルガイド』(日本翻訳連盟)をまとめるとこうなる。

○使用する ×使用しない
または 又は
および 及び

※動詞の「及ぶ」は漢字表記

ただし、「漢字を使用する傾向の強い特許、金融、法律の分野では、以下のひらがなを使用する語句について、漢字を使用する場合があります」という一文が添えられていた。その分野ならずとも、公文書は基本、常用漢字を用いるので、「又は」と表記される。ただ、公文書は「、」ではなく「,」を使ったりと、一般文書では見られない独特な用法がある。冒頭にあげた例は、公文書や契約書などの類いの話だから、公文書の書式に従うという考え方もあるだろう。

ただ、改めて思うんである。日本語の読みやすさってなんなのだろうか、と。

公文書だろうと一般の文書だろうと、どんな文書も、誰かが読むことを想定して書かれている。それに誰もが本当は「読みやすいなあ」と思うものを目指している、はずだ。でも、残念なことにほんの一瞬で(うわ! 読みづらい)と感じさせることがある。その違いが表記だ。

日本語は、漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベットと、時代を追うごとに異なる表記を取り入れてきた言語だ。時の流れとともに、表記の流行は変わる。この 100 年で考えたって、森鴎外みたいな旧仮名遣いから現代仮名遣いに変化したくらい大きく動く。

表記は文章に対する第一印象を決める。少し前に『人は見た目が 9 割』とかいうタイトルの本がヒットしたが、実は文章にだって当てはまる。たとえば漢字ばかりだと堅く、カタカナばかりだとまた読みづらく、ひらがなばかりでは意味がとりにくい。広く読まれる文書は、やっぱりこのバランスがほどよい。作家によっては、表記に対する独自のこだわりだってある。つまり、常用漢字への採否ではなく、要は、漢字とひらがな、カタカナなどを含めた文章のバランスの問題なのではないか。

翻訳というと、ともすると直訳か意訳か、といったことが問題になるけれど、表記だって訳文を構成する重要な要素の一つだ。原文を踏まえるのはもちろんのこととして、日本語に訳す際に、どういう書き方をすれば、きちんと伝わり、ちゃんと読まれるか、ということも含めて校正しなきゃなあと思うんである。

 


 

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