中国ドラマ『宮廷の諍い女』を中国語で観るときに押さえたい単語3

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2011年に中国で放送され、日本でも好評を博している中国ドラマ『宮廷の諍い女』(原題:後宮 甄嬛傳/公式サイト)。描かれるのは、中国版大奥で繰り広げられる、女たちの壮絶な権力争いだ。愛憎、妬嫉、裏切り、失意などが凄まじい迫力で描かれる。

主役、甄嬛(しんけい)を演じたスン・リー(孫儷)の新作《羋月傳》もヒットを飛ばしていて、あとは日本での放送を待つばかりだ。

《後宮 甄嬛傳》の名場面を何度も観ているうちに、気になる単語が出てきたので調べた。

初回の、第 2 回の後宮に続き、本宮を取り上げる。

 

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本宮という自称

これまた宮の字を使うおもしろい言い回しだ。

日本語は自分を表す表現が非常に多い言語といわれるが、本作やその他の中国歴史ドラマを観ると、中国語だってなかなか大量じゃないか、とつくづく思う。しかも、この本宮、ほかの自称と見比べてみると、使われ方が明らかに違う。

何しろ、この自称を頻繁に口にしていたのは、主に皇后と華妃の 2 人。ただし、皇后や華妃は雍正帝や太后と話すときは臣妾を使う。

たとえ中国語がわからなくても、本ドラマファンの方々ならきっと(ああ…)と思い当たることがあるはず。この使い方から言えるのは、相手が目下と見るや本宮を、自分より明らかに上の人には臣妾を、という上下関係に根ざした使い分けだ。

日本語もそうだけれど、本の字の意味は多様だ。そのなかには、こちらの、中心の、といった意味が含まれる。華妃のあの唯我独尊っぷりのキャラからすれば、本宮を使うのはものすごくぴったりだし、皇后だって自分の手下でもある安陵容(のちの鸝妃)に向かって本宮という姿には寒々しい気持ちになる。

2 人だけの専売特許のような自称だった本宮だが、途中、特に後半の、甄嬛が後宮内で力をつけてきたあたりから、彼女の自称に本宮が混じるようになるあたり、脚本がかなり巧みに筆を運んでいることが見て取れる。なお、次作の《羋月傳》では、時代背景が異なることもあってまた違う自称が用いられている。

 

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さて、ほかの貴妃たちが自称として使っていたのは臣妾。ただし、やや身分の低い答應は嬪妾、太后は哀家とまた違う自称だし、宦官や侍女たちは奴才や奴婢といった自称でこれまた違う。

たとえ、現代中国語の中にこうした表現が残っていないという事情を差し引いたとしても、中国語には敬語がないという言説は、まったく言説でしかない、とこの時代の自称の使い方一つを見ていて思う。また端的にいってしまえば、日本語では文末の変化で相手と自分の距離を示すけれど、中国語ではこの自称の使い方で示す、その違いがあるだけのことなのだ。

日本語字幕版を見ていないので、このあたりがどう表現されたのかわからないが、翻訳者の方々がかなり頭を悩ませたことは想像に難くない。日本語はもともと主語を表現しなくても差し支えない仕組みをもつし、相手との距離感の示し方がそもそも違う。だからドラマ内で使われる自称の差異なんてのは、中国語字幕版におけるかなりマニアックな楽しみ方かも。

物語の舞台は後宮だから、中国語字幕に宮の字が頻出するのはごく自然ななりゆきだが、その使われ方は実に幅広い。次回は「自宮」を取り上げる。

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