短期留学3:モゴモゴvsスッキリ

chahuこの時の超短期留学で一番の収穫だったのは、「言いたいことが言えない」という悔しさやもどかしさを十二分に味わったことだ。

聴く力はあっても、話す力がない。相手の話している意味はわかるのに、自分で組み立てるとなるとこうもできないもんか、と毎度、地面にたたきつけられるような、歯噛みをするような、そんな気分だった。あいづちなら打てるけど、意見が言えない、説明できない、感想を表せない…手足をもがれてジタバタしている自分がいた。

一番弱ったのは、授業で前日に観た映画の感想を聞かれた時だ。なぜなら、単に「おもしろかったよ」という一言で済ませられない作品だったから。

映画は《女朋友。男朋友》という作品で、1980年代後半から現代までの台湾が歩んできた道のりを、3人の男女関係を主軸に描く。漢字から推測できると思うが、日本語訳すると「彼女。彼」。2012年の7月、台北映画祭で賞をとった1本だ。主演の俳優陣はそれまでにドラマや映画で観たことのある人たちで、今回絶対に劇場で観たいと思っていた作品だった。で、わたしの感想はといえば…

「タイトルから恋愛映画だと思っていたら、全然違っていました。恋愛ではなく、歴史の物語です。それに、主人公はわたしと同じ世代の人たちです。わたしが日本で学生だった頃、彼らは自由化を求めて闘っていたんですね。中国語を勉強するまで、わたしは台湾について知らないでいました。初めて台湾に来る前、《悲情城市》という映画を観てとても衝撃を受けましたが、その時と同じような、複雑な感情に陥りました」

… 日本語にするとこうなる。もちろん「好看」「有意思」「不錯」(どれも、よかった、おもしろかった、というような意味)ということばで済ませれば、すぐに終わる話題なんだけど、そんなのはわたしの言いたかったことじゃない。だから、頭をフル回転させ、板書を使いながら、必死で先生に説明を試みた。話し終わったあと、先生から意外な返事が返ってきた。「你很可爱(あなた、カワイイわね)」これ、別の意味があるのか?と、しばらくわけがわからなかった。

反対に、前回書いた「返し3語」は教科書にはあんまり載ってないけれど、自ら生成しなくていい。これは、日常生活で使う決まり文句にもあてはまる。今回の台湾で、「返し3語」のほかにも、自分で(決まった!!)と思って使えたフレーズがある。たとえばこんな感じ。

想起来了

意味:思い出した。
使った状況:授業中。なんだったか忘れたけど、単語を思い出して。

你想太多了!

意味:考えすぎ。
使った状況:台北在住日本人の友人宅で、来年小学校にあがる息子くんが、わたしが女だってだけで恥ずかしがった。…どうやら最初にジョシを意識する年齢らしい。

算了!

意味:(この話は)これで終わり!/もういい
使った状況:日月潭観光でタクシーの運ちゃんに。一旦料金合意したはずなのに、車に乗った途端、イヤらしくつり上げてきた。言い訳を一通り聞いてから、「じゃ、いくらいくらね」にこれを続けて言い放ったら、一応了承した(しばらくするとまたゴネられたけども)。

那就好!

意味:そりゃよかった!
滞在先の息子くん(小学5年生)が水泳大会で、自分のそれまでの記録を更新できた、と大家さんから聞いたとき。でもこの表現だけだとなんだか足りないなあと思ったので、彼には「太棒了!」(意味:すごいじゃん)と言ってみた。照れてた。

この、「モゴモゴ」と「スッキリ」の違いはどこから来るのかと考えてみた。まず語学習得の基本的なステップは

1  わかる
2  覚える
3  使う

だ(えらそうに書いてますが、著者に教わったことです)。これらをまとめてみる。

モゴモゴ系→非定型。自ら文を生成しなくちゃならない。

1わかる:文構造自体の理解が必要。
2覚える:1の上に何度も繰り返し練習が必要。
3使う :組み立てながら使わなければならない。

スッキリ系→定型。自分で生成不要。

1わかる:場面、状況、タイミングの理解が必要。
2覚える:特に必要ない。短いから。
3使う :適切な場面に遭遇すれば使える。

立ち往生するかしないかは、上記のような違いがあるからじゃなかろうか。ちなみに、わたしが決まり文句を使えた(たぶんね)のは、ドラマで散々、決まり文句が登場した場面や状況を観ているからだと思う。…そう、頭では理解できた。だけど、自分の考えを自分のことばとして語るには、やっぱり基礎基本をしっかりやらなきゃー、とつくづく感じて帰国した次第です。

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