台湾映画《老鷹想飛》に観るドキュメンタリーの魅力。

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台北で暮らしていて、唯一(これがあったらなあ)と思うものがある。台北であればたいていの日本製品は手に入るし、ほかの場所に比べたら不自由の度合いは比較的少ない。それでもなお思う。日本にいた頃の楽しみだったし、あれこれ探してみたけれど、どうにもならないと知って、どれほど残念に思ったことか。

それは、NHK BSの「BS 世界のドキュメンタリー」という番組だ。自覚はある。マニアックだと。ただ、何しろ、この番組を観てドキュメンタリーのおもしろさを知ったし、これを観るために受信料を払っていた。台湾ではケーブルテレビを通じて、NHK の国際放送を観ることはできるが、この番組が流れないのはおそらく権利処理の問題だろう。わかってはいても、つい残念だなあと思う。

 

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灣生回家》という台湾のドキュメンタリー映画を先日紹介したけれど、今回はまた違った角度のドキュメンタリーだ。タイトルは《老鷹想飛》。老鷹とはトビのことで、まんま直訳だと、トビは飛びたい、という意味だが、本作のテーマはなぜ飛びたい、と思うのか。この 1 点である。

本作は、基隆に暮らす沈振中さんが 1991 年に教師を辞めた前後に始まる。勤続 10 年越えの彼が教職を辞した理由は、このトビだった。それより前、台湾の港町である基隆ではトビはよく見られた。だが、彼はいつの間にか数が極端に減っていることに気づいた。その理由を知るために、そしてトビの保護活動のために、職を辞したのだった。

作品中、沈さんは各地でのトビの暮らしぶりを観察するため、香港、中国(杭州)、日本(仙台、京都)、インド(デリー)、ネパール(カトマンズ)を訪ねてゆく。台湾のトビとどこがどんなふうに違っているのか、トビを追って 5 か国を歩く沈さんの姿を通じて、土地土地で生き抜くトビの姿が映し出された。

そうして、沈さんの保護活動の広がりとともに、トビの減った原因も解き明かされ、彼は務めていた団体の代表を辞する。一つの希望を示して。それが、足かけ 20 年かけて撮影されたことだった。原因がなんだったのかは、ここでは書かないでおく。

さて、ドキュメンタリーあるいはノンフィクションでは、時として人の残酷さをありのままに見せる。その惨状に目を背けたくなることだってある。けれども、その出来事に対峙した人がその事実にどんなふうに向き合い、ひも解いていくか。そこに大きな魅力がある。事実と対峙する姿を見て、勇気を得るのだ。

台北では BS 世界のドキュメンタリーは観られないけれど、台湾には素敵なドキュメンタリーがある。まずはここから楽しんでいこう、改めてそう思った作品だった。あ、まだ上映中ですよ!

 

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