台湾映画《我們的 那時此刻》を観る。

直訳すると「私たちの あの頃、この時」という名のついた本作は、2016 年 3 月に台湾で公開された楊力州(ヤン・リーチョウ)監督による 1 本だ。1962 年に創設された中華映画アワード・金馬賞が 50 周年を迎える際、その記念として製作されたという。日本では2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭、 2016 年の大阪アジアン映画祭などで上映されている。ちなみに、日本上映時は「私たちの」にあたる語「我們的」のないタイトルだった模様。ここでは台湾公開時のタイトルで紹介する。

本作に登場するのは、日本でもよく知られる中華映画にまつわる人たち。監督では侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、李安(アン・リー)、魏徳聖(ウェイ・ダーション)、俳優では桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、姜文(ジャン・ウェン)、戴立忍(ダイ・リーレン)などなど、挙げ始めるときりがない。

映画評論家、製作関係者、映画ファンも加わり、それぞれに映画に対する思い出などが語られる。その映像や語りを通じて、台湾の映画史 50 年を振り返っている。

冒頭は、中華民国国歌(→参考)で始まる。楊監督と同世代のわが家の台湾人の話によれば、昔、映画を見るときはみんなが起立してこの曲を歌い、それから映画が始まったのだという。だからこの始まりは、いわばお約束で、世代によっては郷愁を誘うのだろう。日本で強いていうならゴールデン洋画劇場のオープニング曲みたいなイメージだろうか。そして本編は、金馬賞の由来、当時のニュース映像などともに、歴代の受賞作ハイライト、そして受賞者へのインタビューなどで構成されていく。

本筋としては映画史を振り返る内容なのだけれど、見方によっては台湾史ともいえる。時代背景とともに、その時期に流行った映画の共通点などが説明されていくからだ。台湾語が主流だった時期、右始まりの字幕だった時期、軍事映画が主流だった時期、台湾ニューシネマ前後などなど、どれも興味深い内容だった。

ところで本作を観て、やっとわかったことがある。2008 年に台湾で公開された映画『海角七号 君想う、国境の南』(原題:海角七號)がなぜ大ヒットを記録したのか、ということだ。「台湾で大ヒットした映画だ」と聞いて最初にこの映画を観たとき、その理由に皆目見当がつかずにいた。本作を通じて時代背景や前後の状況について説明を受けてはじめて、ははあ、なるほど、と感じられた。

もう 1 点、台湾のドキュメンタリーについて。台湾の劇映画が低迷していた頃、ドキュメンタリー映画が台湾映画界を牽引した、というくだりがあった。ただ、台湾で見聞きしたドキュメンタリーの代表作は取り上げられていないのが残念だった。

本作だけでなく、そもそも映画の観方も、もっというと本の読み方も、人によってさまざまだ。感じ方やとらえ方は異なるものだし、またおもしろいと思うポイントも違うはず。ただ、もし台湾に興味があってこの作品を観るなら、ぜひ台湾の人と一緒に観ることをおすすめしたい。台湾への理解がより深まるはずだ。

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