台湾ドキュメンタリー映画《日常對話》を観る。

本作を観たのは、2016台北金馬映画祭(台北金馬影展)の開幕 2 日目、西門町にある新光劇場だった。古めかしい建物だけれど、劇場が入った階は映画祭の立て看板や上映スケジュールなど、劇場のあちこちが金馬で飾られている。

観終わって外に出たら、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督が立っていた。エンドロールに見間違いがなければ、本作の監修を務めておられる。そういえば最優秀ドキュメンタリー賞、編集賞にノミネートされている 1 本ということもあってか、初上映となる今回、劇場の 321 席はほぼ埋め尽くされていた。

参考)金馬公式サイトでの作品紹介

台湾ドキュメンタリー映画《日常對話》(黃惠偵監督)のタイトルを新字体にすると「日常対話」で、直訳すると「日常会話」となる。英文タイトルは「small talk」とあって、ここから訳すと「おしゃべり、世間話」となる。一見、軽そうな入り口だけれど、ふだんの何気ない話というのは、実は相当に奥が深いと気づかされることになる。

作品で描くのは、監督自身と母親との関係だ。母はどんな人で、何を考えながら、これまでの人生を生きてきたのか。自身と妹を出産し、父と別れ、はっきりと明言しないままレズビアンとして〝彼女〟を連れてくる母の様子を、家族はどう受け止めたのか。母の実家や複数の〝彼女〟たちへのインタビューを重ねながら、長い間、子どもという立場から明かせずにいた過去を打ち明け、面と向かって訊けずにいた問いを放つ。

黃監督は上映後のトークで、「自分も子どもを授かり、母になった。40歳になるにあたって、自分がこのまま母のことをよくわからずにいるのではなく、ちゃんと向き合おうと思った」と語った。娘のこうした強い決意から始まった撮影に、母の側は「もう撮らないで」などとかなり当惑する。けれども、時間を経て(おそらく何度か対話を重ね)、意を決して口を開くまでの葛藤が手に取るように映し出される。ちなみに、この上映時にはお母様も(週末は必ず行く麻雀を休んで!)会場にいらしていた。

作中、母と娘がテーブルを挟んで話をするシーンがある。向き合ってご飯を食べる場所でもあるそのテーブルで、言えずにいた話をする様子に、いったい全体、母と娘の難しさは台湾も一緒なんだと感じた。降り積もっていた家族の葛藤を、撮影を通じて乗り越えたのだ、と暖かい気持ちになった。

家族の話は、感情がぶつかり合ってこじれることが多いように思う。身近なテーマだけに、ドラマなどではどこか理想的で希望的な着地点に終わらせがちだ。そこへいくと本作は観客の感情を弄ぶ終わり方をしない。監督自身の「無理に感動させたいわけではない」という思いがしっかりと反映されている。重めのテーマながら、まるで娘が母に語りかけるような、どこかやわらかな作品だった。

映画祭期間中の上映はあと 1 回。11 月 14 日(月)12:10〜、新光 2 廳で。

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