広がれ上映の輪! 台湾映画『太陽の子』、台北上映会に参加して。

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2016 年 10 月 19 日夜、台北の交流協会ホールで、1 本の台湾映画が日本語字幕付きで上映された。タイトルを『太陽の子』(原題:太陽的孩子)という。中国語字幕ではすでに観ていた作品だったけれど、日本語字幕をぜひ観たい!と台湾東部の出張先から直接、会場へ向かった。会場に到着して厚手のパンフレットを受け取りホールに入ると、およそ 80 人ほどが集っていた。

台湾映画『太陽の子』は、現代台湾の抱える課題が描き出された 1 本だ。主人公は台湾先住民アミ族の女性、パナイ。彼女はシングルマザーとして 2 人の子どもを地元・花蓮の自身の父親に預けながら、台北のテレビ局で働く。ある日、子どもを世話していた父が自宅で倒れ、パナイは花蓮の村に帰る。深刻な父の病状、職場から矢のようにかかってくる電話、台北に戻らないよう祈る子どもたちの姿、そしてホテル建設をめぐる地元の衝突……パナイはいったいどう決断し、厳しい現実にどう向き合っていくのか。その奮闘する姿が、とても爽やかに描かれていく。

この日は、上映会を企画したジャーナリストの野嶋剛さんナビゲートのもと、作品上映、そして主人公パナイを演じたアロ・カリティン・パチラル(Ado’ Kaliting Pacidal)さんとのトークとライブ演奏、さらにスペシャルゲストとして本作の主題歌を担当したアーティスト・スミン(Suming)も登場し、主題歌「不要放棄」(「あきらめない」の意)を生演奏。最後のまとめとして、野嶋さんによる作品の解説、さらに上映会を決意した理由などが語られ、実に盛りだくさんの内容だった。

ところで映画のハイライトのひとつに、パナイが子どもの頃、母語がアミ語であるにもかかわらず、その訛りを人に悟らせまいと必死に練習して中国語のスピーチ大会で表彰され、その時の自分を「いちばん嫌い」と語るシーンがある。言語への同化圧力がもたらす苦悩をマイノリティ自らが告白する、緊張と迫力の漲るシーンだ。実際、演じていたアロさんはトークで話していた。

「このシーンがいちばん難しかったですね。演じている間じゅう、身体が震えていました。監督からは絶対に泣かないように、と言われていたのですが、泣きそうでした」

というのも、このシーンはアロさん自身の実体験でもあり、ヒアリングした監督が脚本の中に織り込んだのだそう。言語の分断が自尊心にどれほど大きく影響し、どれほど大きな傷を残すか。台北に暮らしていると至る所で見聞きするが、とりわけ先住民に対する影響は大きい。言語だけではない。都市と地方、漢人と先住民、親子と、台湾におけるさまざまな階層や分断が描かれる本作からは今の台湾が鮮明に描かれている。

この上映会を企画した野嶋さんは、本作を 2015 年に台北で観て「素晴らしい作品だ」と強く感じ、日本でも上映されるものと思っていたそう。だのに、翌年春になってもその声を聞かない。劇場公開はおろか日本での配給会社も決まっていないと知り、自身が立ち上がることにした。そこで野嶋さんが目標にしたのは次の 3 点。

1)日本の何カ所かで(できれば東京以外でも)「太陽の子」を上映すること
2)日本の映画館で正式に上映が決まり、上映権をちゃんとした配給会社に引き継いでいただくこと
3)日本のどこかの映画祭に出品されること
(上映会配布のパンフレットより)

監督から直接、非営利による日本上映の許諾を得た野嶋さんは、この 7 月から 10 月までの合計で 2,000 人以上がこの作品を見る機会を作り出した。この日の上映会も、野嶋さんから本作が劇場でより多くの人たちに見てもらえるように協力してほしい、と呼びかけられて終了した。

とかく「親日」というだけで語られる台湾だけれど、実はもっともっと奥深いものがある。ストーリーや時代背景だけでなく、音楽、映像など、さまざまな切り口から対話が広がる 1 本だ。上映ご希望の方は、上映プロジェクト責任者のジャーナリスト野嶋剛さんまで直接連絡してほしい、とのこと。

連絡先)nojima1968@gmail.com

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