フリーランスが仕事を引き受ける時の 3 ステップ。

フリーランスになって 3 年が過ぎた。先日、これまでにお仕事をしたクライアントさんの数を数えてみたら 15 社になっていた。内容も、編集、ライター、翻訳、校正、コーディネート、WEB 運営と多岐にわたり、必要なスキルもそれぞれに異なる。一見バラバラだが、どれも基本的には日本で経験し籍の編集経験や日本語のスキルにかかわるお仕事ばかりだ。決して器用なわけではなく、たとえば本の制作過程の前半か後半か、コンテンツの形態が本か映像か WEB か、といった違いによるもの。

このほかにも、交渉の過程で合意できずに制約にならなかったり、いったん制約して始めたもののこちらの読みが甘くて大いに後悔したり、ということを重ねてきた。そうして、自分なりにお仕事を受注する際の基本の流れをまとめておく。

ステップ 1:お客様の依頼内容を理解する

なんとも当たり前のことだが、実はこれが案外、難しい。仕事がちゃんとわかっていないと、あとで大いに後悔するし、提示された条件が妥当なのかどうかも判断できない。

興味のある内容であれば思い切って引き受けるのも一つの手だ。けれども、特に新規のクライアントさんとは、自分の業務内容が具体的にイメージできるまで、きちんと確認するほうがいい。

それもこれも、相手の求めているイメージと、自分のイメージが同じだとは限らない。むしろ「違う」という点からスタートしたほうがいい。ここをしっかり合わせておかなければ、あとで困るのは自分だ。

たとえば、ライター仕事といっても、編集部がアレンジしてもらい、ライターは取材先に行って書けば終わる原稿もあれば、取材先の選定や交渉も含めて取材し、原稿を書くケースもある。これは、厳密にいえば、企画立案から任されていることになる。負担はおのずと後者のほうがずっと重い。だが、そのどちらを求めているかは、編集者さんの範疇にあること。

たとえば、翻訳校正といっても、パワポ資料の場合は、単に用語が中国語から日本語に置き換わっていればいいわけではなく、内容チェックである校閲と文章を整えるリライトも視野に入る。その上で、必要なら日本語話者が見ても違和感のない仕上がりを目指す。でも、単なるチェックだけでいいのか、リライトまで視野に入れるのかは、やはりクライアントさんが決めることだ。

繰り返すが、「原稿執筆」「翻訳」というだけでは、その具体的な内容は自分と相手とで定義が違うこともある。だから、求められている仕事がなんなのか、しっかりと見極めるためには、お客様のニーズをしっかりと把握するためのコミュニケーションが欠かせない。

ステップ 2:スケジュールを確認する

業務内容が理解できたところで、お客様が希望する〆切と自分のスケジュールを照らし合わせる。

「予定は未定」とはよく言ったもので、具体的に動かしていく段になると、ずれ込むことは往々にしてある。仕事の予定を考えるだけでよければ楽だが、人にはそれぞれの暮らしがある。個人の予定、家族の予定、はたまた体調を崩すことだってある。そういった諸々も大いに影響するので、見逃さないようにする。

そして、改めて依頼された内容に対応できるかどうかを見極める。お客様の納品希望日と先約なども含めてスケジュールを組み立て、自分なりのデッドラインを決める。ちなみにわたしは、この自分なりのデッドラインを必ず、指定された〆切よりも前に設定する。

スケジュール管理には「Googleカレンダー」を利用している。決まったものは 1 年先でも入れておく。個人の予定、担当企画の予定、一時帰国の予定など、色分けで一覧できる。また予定は、必ず月単位で見る。定期で月刊誌の仕事を抱えているので組み立てやすいというのもあるが、月単位は全体を把握し、整理しやすい。実は機能がないので仕方がないのだけれど、本当なら 2 〜 3 か月単位でみたいくらい。

編集という立場なら最終的な工程まで見えるので、時間をどう読むかは比較的易しい。想像する際の一つの基準は、絶対に動かせない発売日の待ち構える定期刊行物かどうか。定期刊行物なら校了日は動いても数日だが、書籍や WEB となると日程変更も大幅なので、心の準備が必要だ。

特に編集やライター仕事の場合、納品して終わりではなく、ゲラや仮サイトのチェック、事実関係の確認など、必ずその後の工程がある。諸事情で書き直しなんて言われたら、改めて日程を確保しなければならない。だから、予定が変更になると、ゲラのチェックが別のスケジュールとかぶるなど、対応に苦慮することになる。

ライターになってわかったのは、この立場は日程が読みにくいということ。いちばん困るのは、編集者さんからの事前通告なしの日程変更だ。少し前も、予告なしに大幅に日程が変更され、埋まるはずのスケジュールががっぽりと空き、あとから原稿書き直しという事態が発生し、困り果てた。編集者の皆さん、スケジュール変更のお知らせはできるだけ早くお願いします。

また個人のスケジュールの中で、すでに動かせない予定については、可能な限りシェアする。どちらかの進行がずれてきたときに、迷惑がかかるような受け方は、こちらもしたくない。

そのスケジュールを調整するためにも、1 本の原稿を書くのにどのくらい時間をかけているのか、原稿を読むのにどのくらい時間がかかるのか、翻訳にはどのくらい時間がかかるのか、日頃から自分工数を把握しておく、ということも必要だ。

ステップ 3:ギャランティを確認する

業務内容が判明し、スケジュールを確認したところで、で、それがいくらになるのか。平たくいえばお金の話は仕事を始める前に済ませておきたい。不思議なことに、編集やライター、といった仕事ほど曖昧で、翻訳の場合は「いくらになりますか」と訊ねられることが多い。翻訳のほうが明朗会計だ。

最初からギャラを明確にして依頼してくださる方もあるが、問題はそうじゃない場合にどうするか。異論はあるかもしれないが、わたしはサイト上に見積書を送ることを明記しているので、そのやり取りを経るようにしている。

誤解のないように明記しておくけれど、その額の大小を問いたいわけではない。いや、もちろん多ければうれしいけれど、いちばんは契約内容をハッキリさせておきたいから。見積書や契約書のやりとりがあればベストだけれど、ここがボンヤリしている場合、(この労力はいったいいくらになるんだろう)と不安を抱えたまま過ごすことになり、自分の暮らしに悪影響しかないと身に沁みている。そういう状態を作り出したくないのだ。

というのも、その昔、別の業界だけど給与未払いの目にあったことがある。だからできるだけ、諸条件をクリアにしておきたい気持ちが強い。ライター仲間の中には、契約書のない状態で業務を引き受けて、訴訟を経験した人がいる。「他者の経験や知識をシェアする」ための文章や本が、そんな形でうまれるなんて、まるきり本末転倒ではなかろうか。

それに、ね、謝礼を伝えない慣習って、そもそもおかしくないですか。本 1 冊、コーヒー 1 杯、映画1本、どんなサービスをやりとりにも金額の提示ややりとりが発生するのに。

さて、こうやってまとめてみると、ごくごく基本的な流れだ。だが、この 3 つのステップを経て、最初に仕事の全体像を明確にし、自分で納得して、初めて依頼された業務にとりかかる。このプロセスを経ないまま始めたものは、あとあと後悔することが多い。いったん納得して引き受けたら、あとは全力を尽くすだけ。そして、自分の仕事がきちんと人に理解されるよう、地道に積み重ねていきたいもんである。

ちなみに本日の写真は、台湾の東海岸沿いの列車に乗っていた時のもの。こんなふうに、開けた視界で仕事したいなあ。

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