フリーランスを会社に置き換えて考えてみる。

フリーランスになって 3 年。振り返って、自分の未熟さを披瀝することばかりヤラかしてきた。会社員ではないという働き方の試行錯誤は今も続いている。一方で、少しずつ見えてきたこともある。この間に大いに学んだことの一つは、特定スキルだけではフリーランス仕事は成り立たない、ということだ。

よく「書くのが上手だからライター」とか「中国語ができるから翻訳者」といった技術的なスキルだけが注目されるのだけれど、実際にやってみるとそれだけではないことが身にしみている。そこで、改めてフリーランスという仕事を、あえて会社組織のように分解して考えてみることにした。

フリーランスとしての方針を決める=会社なら社長や経営会議、取締役会

ひと口にフリーランスといっても、ライター、ブックライター、編集者、翻訳者、デザイナー、イラストレーター、プログラマーなどなど、実に多様だ。その多様な中で、自分はどんなフリーランスとして仕事をしていくのか。これを考えていく必要がある。それは会社組織でいえばすなわち、社長や経営会議、取締役会の存在にあたる。

フリーランスの場合はそれを一人脳内会議としてやることになる。自分で方針や方向性、時間コスト、あるいは投資を決める。方針といっても、たとえば請け負う料金基準だったり、受ける受けないの線引き、買う書籍や通う講座などでもいい。そういったフリーランスとしての行動を考えることが必要だ。

フリーランスとしての職場環境を整える=会社なら総務部

会社員時代、総務部へ行けば、ペンのインクはあったし、いろんな種類のフォルダーが常に準備されていた。名刺は支給されていたし、郵便を出すなら総務部で切手を貼っていた。部署のプリンターが壊れたって総務への電話で済んでいたのがなんだか懐かしい。

フリーランスになると、そうはいかない。名刺、文房具、机やパソコンなど、仕事に必要な環境を自分で整える。切手 1 枚、封筒 1 枚だって自分で準備する。お気に入りのペンがあるなら、そのペンのインク、プリンターの用紙もなくならないように気をつけておく。

あるいは、働く時間や健康保険の加入なども総務的な観点での仕事だ。自分の就業時間はどうするのか、昼休みや休憩はどう取るのか、働くときの服装はどうなのか、自宅の電気代だっておろそかにしたくないものである。この「働く環境の整備」というのは、かなり大事な部分なのだ。

フリーランスとしての法律を知る=会社なら法務部

業務を請け負うということは、クライアントと業務契約を交わすことだ。だから「法律は詳しくない」で終わらせるのではなく、まず取り交わす方向で進めることが自分の身を守ることになる。契約書がない場合は、契約そのものがなかったことにされたり、不利な条件を背負わされることだってある。

特に、ライター、翻訳者といった、文字系フリーランスの人、またコンテンツ制作にかかわる人にとって必要不可欠な知識が、著作権と二次使用などの権利だ。たとえばライターなら、その原稿が編集部買取にされるのか、それとも著作権はライターに残るのか、これだけで随分と大きな差だ。

フリーランスとしての経理処理を行う=会社なら経理部

請求書の発行、送付、そして報酬の入金確認なども、自分でやらねばならない。わたしの場合は海外在住という特殊事情もあって、担当の方からお尋ねが来ると、誰が答えてくれるわけではなく、もちろん自分で回答する。

請求書や見積書のフォーマットは、グーグル先生に聞けばたくさん出てくる。取材費用も書類にまとめるのがめんどくさくてそのままにしがちだが、それは原稿料などの謝礼ではなく実際に自分が払っているお金だ。これもまた「あとでいいや」とか思うのではなく、しっかり管理しておきたい。

フリーランスとしての仕事を獲得する=会社なら営業部

仕事の依頼があった時に、しっかりと納得した状態で始めたい。それがささやかながらフリーランスとしての願いだ。けれども、依頼内容は率直に言って厳しいものが多い。原稿料の額はもちろん、ギャランティの提示がないものもあり、そこからお客様とやり取りをしなければならない。

ただ、お金の話だけに、慎重にならなければとも思う。最近になって、こうした交渉事に対する自分の認識の甘さを痛感し、各種ビジネス書を読んでいるのだけれど、目から鱗が落ちるとはこのこと!というくらいに気づきが多い。

特に響いたのは、売り手よし、買い手よし、世間よし、という「三方よし」の考え方を持つこと、そして長期的ビジョンに立つこと。海外に住んでいると、おのずと長い目で考えざるを得ない。自分のやりたいことだけではなく、日本のニーズを理解しつつ働いていくことの難しさを感じている。

フリーランスとしての依頼を遂行する=会社なら事業部

これまで書いたようなことが諸々あって、やっと「原稿を書く」とか「日本語に翻訳する」とか「記事を編集する」といった自分の技術的な仕事に焦点があたる。

逆に言うと、会社にいれば別の部署の誰かがやってくれていたことを、フリーランスでは自分ですべて担わなければならない。「ライターだから請求書を出さなくてもいい」とはならないし、「ライターだから法律は知らなくていい」なんてのも、ない。むしろ、フリーランスにはトータルなビジネススキルが、実は求められる。

「フリーランス」というと、どうしてもその特別なスキルだけにスポットがあたるし、それだけができればよいように思われがちだが、実際にはまったくそうではない。つまりは法人化はしてないけれど、実質的には「社員一人の会社」と言い換えられそうだ。

また、会社のセクションで見ていくと、ビジネススキルとして弱い部分がちょっとクリアになってくる。ちなみに、わたしはフリー的営業部セクションが弱い。交渉術の本なんぞ読んでいるのも、原稿を書くだけではダメだ、と思うことに多々出会ってきた。別に何かに勝ちたいとかそういうことではなく、そもそも交渉するってどういうことなんだ?という根本的な疑問を持ったのだが、こうなるとすでに個人的興味の領域。交渉をテーマにした本についてのレビューは後日また。

さて、皆さんはどこのセクションが強い/弱いですか。

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