台湾映画《超級大國民》(超級大国民)を観る

しばらく前から、映画館で各種予告編とあわせて本作のデジタル版への移行が国家電影中心によって進められていることが流れていた。友人から「こんな会があるんですけど」と案内をいただき、昨日、大哥と台湾師範大学台湾史研究所主催の上映会に参加した。上映後の監督トークを聞きながら、国家電影中心がデジタルリマスター版制作の予算を割くことの意義を感じていた。

萬仁(ワン・レン)監督には、本作含め超級三部作とされる《超級市民》(1985)、《超級公民》(1998)などがある。本作は 1995 年の台湾映画アワード金馬賞で最優秀作品賞にノミネートされ、主演を務めた林揚は主演男優賞を受賞。本作の脚本には『悲情城市』の脚本にも携わり、『天空からの招待状(原題:看見台灣)』でナレーションを務めた呉念真(ウー・ニエンジェン)が加わっている。

あらすじはこうだ。50 年代、読書会に参加していた主人公は、それがもとで捕らえられ、拷問を受けた末、会のリーダーの名を白状してしまう。16 年の服役を終えるが、病を患い、出所後も養老院で 14 年もの間暮らしていた。ある日、リーダーの死の真相を知るため、当時の関係者の元を訪ねてゆく--

舞台となっているのは 1950〜90 年前後の台湾。監督による関係者への取材や資料などにもとづき、現代台湾史に大きな影を落とした二二八事件、白色テロ、さらに戒厳令下の世相がありありと映し出される。当時、嫌疑をかけられ、服役し、刑期を終えて暮らすとはどういうことだったのか。改めてその闇の深さを垣間見せてくれる内容だ。

本作は 1995 年の東京国際映画祭でも上映されたようだ。日本語で本作を紹介するサイトには「北京語、台湾語、日本語」と映画の使用言語が紹介されているが、量からいえばほぼ全編台湾語、ほんの少し日本語、残りが北京語の順といっていい。衝撃的だったのは、映画の最も重要なシーンのセリフが日本語だということ。主人公が日本統治時代に育ち、日本語教育を受けた世代なのだから、作中にぽつぽつと日本語が混じるのは当然といえば当然なのだけれど、やはりズシンとのしかかるような迫力があった。

上映後の監督トークでは、そのセリフづくりに大きくかかわった人物こそ、呉念真だったことが明かされた。呉念真は、監督の書いた脚本に大幅に手を入れ、そのセリフを読み上げた音源を主役の林揚に渡したという。林揚は台湾語の役者さんで、もちろん台湾語として間違いではないのだけれど、監督からすれば何かが違ったのだろう。「何度も撮り直した。改めて呉念真はすごいと思った」と当時の様子を振り返っていた。……やっぱりなあ、あの《看見台灣》での呉念真のナレーション、めちゃめちゃハマってたもの。あの声といい、トーンといい、ずば抜けているんだな、と改めて感じた。

ちなみに、本作の英文タイトルは「SUPER CITIZEN KO」とある。この「KO」とは主人公の姓「許」の台湾語読みなんだそう。ずっと疑問だったので、監督の話を聞いて霧が晴れた。

さて現在、台湾の市場に出回っているものも、VHS 版しかないのだそう。デジタルリマスター版ができたことで、改めて観る機会が増えるだろう。1987 年の戒厳令解除以降、台湾は言論も徐々に自由化され、いまや当時の面影はほとんど感じられない。当時のことを知る人たちも高齢化した今だからこそ、若い世代が当時のこと、現代につながる歴史を知る意味は少なくない。台湾では 2016 年 10 月 28 日から華山光點、長春國賓、高雄駁二などで劇場公開が始まっている。台湾や台湾史に興味がある方なら、きっと多くのことを感じられる 1 本だ。

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