台湾嫁(台灣媳婦)が、台湾の台所との距離をちょっぴり縮めるまで。

台湾で披露宴をあげたのはちょうど 2 年前。日本から友人たちが訪ねてくれ、台湾式のおもてなし?として一生一度(のはず)のコスプレをし、大いに喜んでもらった。その頃すでに台湾の翻訳会社に半日だけお世話になりながら、他方、このサイトを立ち上げ、ほぼ毎日記事を更新していた。

その頃の食事のことはあまり覚えていない。記憶にあるのは、我らふたりの高齢結婚を友人たちが喜んでくれ、しょっちゅうお祝いと称する飲み会に駆り出されていたことくらい。この頃の写真を見ると、わたしも大哥もむくんだような顔をしている。当然だけれど、振り返ると恐ろしいことこの上ない。

近所には、濱江市場という台北で最も大きな市場がある。スーパーへ行くより近いし、圧倒的に新鮮、さらに自分の興味本位も手伝って、同居を始めた頃から行き始めた。だが、同時に、海外暮らしの市場利用の難易度の高さも感じていた。行くだけなら楽しいんだが、いざ利用するとなると話は少々違うのだ。

まず、市場だから当然のことながらパック売りをしていない。魚は 1 尾そのまま、肉は部位ごとにどーんと店頭に置かれ、八百屋の野菜も束になってドサッと置かれている。名前も値段も表示はほとんどなく、お店の人に聞く以外にない。だが、お店の人が話すのは國語(北京語)ではなく台語(閩南語)がほとんど。店頭でやり取りされる内容は、数字さえもわからないでいた。

値段の設定も「1斤=600g」の価格が標準。これがまた慣れない。安いのかどうかなんてことはもちろん、どのくらいの量になるのか、使いきれるのか、瞬時に判断せねばならない。並んでいる品物の山から自分で一つ一つ選ぶのだって、時間がかかる。一度の買い物に半日費やすほど。

その手間を惜しんで日本で使っていた野菜を買うと、決まって後悔した。傷んでいたり、新鮮でなかったり、結局使い切れなかったり(無駄遣い!)。調味料も、どこの会社のがいいのかわからないから、高いとわかっていてもわざわざ日本資本のデパートに出かけていた。日本でもそれなりに料理をしていたほうだが、限られたレパートリーにさまざまな角度から制限がかかり、結局、市場のそばにいるのに使いこなせていない敗北感が大いにあった。

今では絶品だと言い切れる義母の手料理も、実を言うとおいしいと思えるまでに時間が必要だった。最初はあまりの薄味に舌が慣れず、内心(うすーーっ)と思いながらいただいていた。いやはや、超絶フトドキモンである。

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(お義母さんの真似してみよう)

ふとそう思ったのは、大哥と暮らし始めてずいぶん経ってからのこと。義母の横で、洗い物をしながらどんなふうに調理しているのか、じっくり見るようになった。そして、わからないことは大哥や兄弟たちに國語(北京語)←→台語(閩南語)の通訳をしてもらいながら、義母に訊ねていった。

本屋さんで素材の名前や旬、簡単な調理法をまとめた事典や、料理に関する本を何冊も買い込み、大哥行きつけの台湾居酒屋さんで「食べたことのないもの」をいただいたり、調理してもらったり、おすそ分けをもらったり。

さらに、台湾に嫁いできた友人たちに、どんなふうに台所仕事をしているのか、機会があるたびに聞きまくった。ネットでレシピを探す友人もいれば、お姑さんや旦那さんに教わっている友人もいる。みんな、それぞれに苦労と工夫を重ねていた。

市場の言語が台語(閩南語)中心だとわかってからは、買い物になるべく大哥を連れて行った。荷物持ち兼通訳というと聞こえはややいいが、そうでもしないと、店によっては外国人だとわかってふっかけられたり、対応されなかったりすることへの苦肉の策だった。彼が店の良し悪しを見極め、次からはそこへ買い物に行くようにした。

ある程度、お店の人との関係ができてくると、対応もスムーズになるし、ちょっとしたおまけをしてくれることもある。市場でのコミュニケーションが鍛えられていく感覚、とでもいおうか。

そんなこんな、右往左往しながら、濱江市場に行くようになって 2 年半ほど経った。今では、豚肉、鶏肉、魚、野菜、卵、キノコ類、豆腐、果物、乾物、調味料といったおおよその材料がそろえられるようになってきた。

義母の料理も、見よう見まねでトライを重ねている。キャベツ一つ、タケノコ一つ、同じ素材でも扱い方が日本とは違っていて(こうすればいいのか!)と思うことばかり。すべてがうまくいくわけではないので、大哥の箸が進まないと凹むのだけれど、支えにしている一言がある。

「料理は場数が大事」

これは、公私ともに日本でお世話になっていた友人の言葉。結局、試行錯誤以外にない。回り回って、台湾でもこの言葉にたどり着いた。今や料理上手の義母も、結婚当初は料理がまったくできなかったのだそう。そこから 50 年以上かけて今の腕前になった。

さて本日の写真は、台湾の市場で撮影したもの。料理の写真はすべて義母の手作りである。品数が圧倒的なラストの 1 枚は、拜拜(祖先へのお参り)の時の玄関先。

いやはや、先はなんとも長そうだ。失敗の確率は日本より高いけれど、そこもしっかり&ちゃっかり楽しみながら、台所との距離を縮めていこう、と思う。ま、こういう人生を選んだのはほかの誰でもなく自分なのだから、しゃーないのぅ。

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