留学後の持ちものを考える。

dongxi唐突だが、あなたは自分の下着が何枚あるか、即答できるだろうか。下着でなくとも、タオルでも靴でもなんでもよい。持っているモノの中に、長い間、使っていないモノはないだろうか。あるいは、引き出しのどれか一つ、何がいくつ入っているか、最後に使ったのはいつか、思い出せるだろうか。あるいは何かを使う際に(あれ、どこにあったっけ…)と探すことはないだろうか。どれか一つでも思い当たるようであれば、それはもしかしたら持ち過ぎからくる症状かもしれない。

 

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モノとの付き合い方を考えて

留学生として台湾に渡る際、段ボール 6 箱と 45L のザック、2 泊程度の荷物の入るスーツケース 1 つという量にまとめた。それがわたしの人生の持ち物すべてだった。内訳は、本が 2 箱、日用品、食器が 2 箱、雑貨、礼服も含めた服、靴、そして山道具で 2 箱。多くのモノを処分したり、人に託したりして究極に厳選した。それでも、少し多いほうだったかもしれない。留学仲間の中には段ボール3箱の人もいたから。それでも十分にやっていける。

モノの整理自体は、留学のずいぶん前からやっていた。きっかけは、父の死とその遺品整理だ。晩年、着る機会さえないままに「高かったから」というだけで保管されていた大量のオーダーメイドスーツやワイシャツを前に、喪失感がないまぜになった軽い怒りを覚えた。葬式はやってほしいと言った以外、遺言めいたものはなく、彼の荷物を処分するかは家族に託され、結局、処分した。ずいぶんと経ってから、やっぱり片付けを心がけている友人と話していたら、彼女が「死んでまで持っていけないもんね」と言った。けだし名言だと今なお思う。

父は第二次世界大戦が開始するその年に、母は終戦のその年に生まれた。究極にモノがない時代から大量生産の時代に生まれ育った。モノが急激に増えていく中で、モノの量=豊かさとし、それを是とする価値観の中で生きてきた世代といえる。だが、今はどうだろう。モノがあることは必ずしも豊かさを意味しない。単価 100 円で多くの日用品が揃う。モノとの付き合い方は新しい時代を迎えているといっていい。金子由紀子さんの『持たない暮らし』は、そのタイトルといい、内容といい、大量生産、大量消費時代を過ごすわたしたちがモノとどう向き合うかが丁寧に説かれた良書だ。安かろう悪かろうではなく、よいもの、気に入ったものを少しだけ持つ、そして買う前にきちんと考える、その習慣は彼女の本から学んだ。

持つ、維持する、時間をかける

さて、留学期間を終えて台湾に留まることになり、改めてモノの量を考えることになった。今度のきっかけは洗濯である。わが家の男子ふたりは、上から下まで 2 週間洗濯無しで OK の量の服を持っている。わたしはせいぜい 3 日分。その格差は致し方なく、自分のサイクルで洗濯していたら、こう言われた。「ね、そんなに洗濯してたら使う水の量は多くなるんじゃない?」。東京にいた頃は、母と妹とわたしの 3 人で、毎日洗濯していた。それが 3 日に 1 回になっただけでもすごい変化だと思っていたから、正直、面食らった。

そうなのだ。気をつけなければならないのは、モノを買った後だ。モノは存在の確保と同時に、そのメンテナンスの問題が起きる。衣類なら洗濯、かばんや家電なら修理、部屋なら掃除、といった具合に。だから新しくモノを買う際に、できるだけ自分でメンテナンスできるものを買う。洋服なら自分で洗濯できる素材、かばんなら修理サービスまである会社、ペンなら替芯があるタイプ、というふうに。そうして、最終的には処分までを考えておく。おおげさな言い方をすれば、そのモノの人生を引き受けられるか、でもある。

心地よく、暮らしを楽しむ。

持ち物は、日々向き合って楽しくなるものを持ちたい、と思う。安ければ買うのではなく、持って心地のよいものを持つ。心地よさとは、服なら肌触りや着心地、小物なら好きな色やデザインなど。それらを必要な量だけ持つ。

そうやって、持ち物を厳選するのは、自分の暮らしをどう楽しむかと同義だからだ。暮らしを織りなす構成要素は、仕事と家事だけではない。どんな休日を過ごすか、どんな人と付き合い、どんなモノを持つか。それは、心地よくしようとする、過ごし方すべてにかかっている。気分の悪い話を聞くくらいなら笑えるドラマを見るほうがいいし、週に 2 度の洗濯を 1 度にして原稿を 1 本書くほうがいい、一人で黙々と洗濯するよりは週末に 1 度、大哥と一緒にやるほうがいい。一度きりの人生を、些細なことまでもおおいに楽しみたいと思うんである。

写真は、15 年もののパンツ。あちこち傷んでいるのだけれど、どうにも気に入っている 1 本。台湾に来てからほどけてしまったポケットを、友達が直してくれた。ありがとう。

お部屋も心もすっきりする持たない暮らし


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